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アロマセラピーを導入し、患者様のQOLと看護の質を向上させよう
〜スキントラブル解消作戦NO3 ケア応用への模索〜


はじめに
臨床で看護師として通常の業務をこなしながら、看護ケアにアロマセラピーの知識と技術を生かして行くためには、そこそこの職場環境に合った工夫をして行く必要があります。今迄時間や手間の都合上患者様へのアロマケアの提供がどうしても偏りがちになってしまい、もっと効率の良いシステムを作る必要があると考えていました。今回はスキントラブル解消作戦NO3と題してアロマをケアの一環として取り組んで有効であった症例を4例報告致します。また、アロマケアが必要と思われる患者様に、時期を逃さず、より良いケアを提供するにはどうすれば良いか考えてみたいと思います。
活動目的
アロマセラピーで使われる精油を利用して、スキントラブルの解消や予防、苦痛の緩和を行い、患者様のQOLを高める援助を行う。
活動方法
  1. 上顎癌で入院治療中の70代の患者さん。当時起こしていた放射線性皮膚障害を、それ以上悪化させず、速やかな治癒を促進する目的で精油のブレンドオイルを作り、照射直後と、眠前に毎日患部に塗布した。また、ティートリーとレモンを用いた含嗽水を使用。嘔気、気分不快等に精油の空気清浄効果によるリフレッシュを試みた。
  2. 血管刺激性の強い静脈内注射を行う患者様の血管痛緩和、及び静脈炎予防のために、精油を用いた湿布を貼用し著効を現した2例についての報告。
  3. 多発性口内炎が治癒した後も原因不明の口腔内痛が続いている患者様に、メンタルケアを含めて行ったアロママッサージの効果
経 過
スキントラブルの解消のために、今回は、精油の働きは勿論の事、ベースとなる種々の植物油が持っている治療特性をなるべく生かしたブレンドを作ってみました。

【事例1】 
放射線性皮膚障害に対する取り組み
70代のSさん 病名:上顎癌(告知済み)

<背景>
抗癌剤投与による腫瘍の縮小を待って手術を勧められましたが、上顎全摘と左眼球も取らなくてはいけないと聞き、手術を拒否された患者様です。そこで放射線療法を併用し、効果があれば眼球温存で手術を行うという治療方針となり、これに同意されました。二人の娘さんがおられましたが、治療やケアに対
し非常に協力的でした。患部(左頬部)の放射線照射総線量は、60Gy(2Gy×30回)で、この取り組みを 開始した時、すでに23回が終了していました。
<現状>
開始時のSさんは、左目瞼が下垂して眼脂が増え、眼下部の一部皮膚剥離と浸出液が見られました。左頬部全体の発赤と一部黒っぽい皮膚変化が見られ、全体的に炎症を起して腫れぼったい印象でした。また抗癌剤の影響で食事がほとんど摂れない状況で、病院から処方されたイソジンガーグルによる嗽も、匂いがダメで、なかなか出来ていない状況でした。
<ケア・プランとして>
■目標
放射線皮膚障害による眼下部の皮膚剥離と、左頬部の皮膚炎をこれ以上悪化させない。
患部皮膚の表在性感染症を予防する。苦しい治療環境をできるだけ和らげる援助を行う。

■精油のブレンドオイル塗布
放射線照射直後と、寝る前とで一日2〜3回患部に塗布。照射がお休みの土日は、朝もつけてもらうようにしました。  
※注意:植物油を使用しているため、放射線照射に伴う皮膚温上昇の可能性を考え、照射前には塗布しないように説明しました。

ブレンドオイル 植物油 グレープシード油 6ml
ローズヒップ油 3.5ml
カレンデュラ油 3滴
ウィートジャーム(小麦胚芽)油 1滴
精  油 真性ラベンダー 0.05ml
ティートリー 0.05ml
ローズウッド 0.1ml 
    計 10ml(2%)

■含嗽薬として

取り組み開始1週間後、「イソジンガーグルの嗽はしづらそう。」という娘さんからの訴え
があり、以下の計画を追加しました。

 含嗽水・・・水道水 200ml に 精油(ティートリー 0.05mlと レモン 0.05ml)よく混ぜ、嗽を行う。嘔気に対し「何とかしてやりたい。」という娘さんのご希望もあり、適当と思われる精油をハイゼガーゼにそれぞれ染み込ませたものを、揮発してしまわないように個別にビニール袋に包んで準備しておき、つらい時や眠れない夜などに枕元やベッド柵に掛けておく事を試みました。これは、精油の自然揮発による空気清浄効果とリフレッシュを期待したものです。

■消臭・空気清浄として

グレープフルーツ、レモン、ユーカリ、ペパーミント等の精油を使用。

更に6日後(塗布開始後13日目) 
皮膚症状の改善に伴い、ブレンドオイルの内容を変更しました。

ブレンドオイル 植物油 グレープシード油 6ml
ローズヒップ油 4ml
カレンデュラ油 1滴

精  油 真性ラベンダー油 0.1ml
ローズウッド油 0.05ml
ゼラニウムブルボン油 0・05ml
    合計 10ml(2%)


【事例2・3】
血管刺激性の強い静脈内注射を行う患者様の血管痛緩和及び静脈炎予防。
以下の2症例は、どちらも口腔外科領域の癌の術後の患者様ですが、術創の移植組織の血流があまり良くなかった為に、血流改善目的で、プロスタンディン注(アルプロスタジルアルファディスク)という褥創・皮膚潰瘍治療剤の輸液を行う事になりました。この薬剤は、非常に血管刺激が強いという事で、製造メーカーからも赤字で注意書きの添付がありました。最初に使った患者A様は、点滴開始後間もなく静脈が赤黒く浮き出すように怒張し、輸液針の周辺を非常に痛がられました。

ケア・プランとして

■目標
血管刺激症状を緩和し、静脈のダメージを軽くする。痛みを抑え、治療の苦痛を軽減する。
■湿布
精 油・・・ローズウッド  0・1ml、真性ラベンダー  0.1ml を水道水100mlに落とし、よく混ぜる。
これにガーゼ適量を浸し軽く絞って患部に当てる。適宜絞りなおして当て直す。
患者B様の場合A様の結果を受けて、B様にはプロスタンディン注を開始する30分程前から、A様と同じ精油の湿布を前もって行い、注射に臨んで頂きました。

【事例4】
原因不明の口腔内痛が続いている患者様に行ったアロママッサージの効果

70代 病名:多発性口内炎
介護の夫との二人暮らし

今回、前回と同じ病名による入院でした。一度目の入院から、口内炎による口腔内疼痛を断続的に訴えられ、鎮痛剤を常用されていました。治療により、口内炎が治癒しても、痛みが軽減せず日に何度も痛みを訴えられ、夜間不眠にて睡眠薬も使用していました。主治医も口腔内の状態が皆伝するのに対し自覚症状の改善が見られないので、自宅での介護ストレスなどの心理的影響があるのではないか?との見解でした。
ケアプランとして
■目標
長期間に渡る断続的疼痛や不眠で、緊張して硬くなっていると思われる後頚部〜肩、肩甲骨周辺部の筋の凝りをほぐし、マッサージする事でストレスを解消し、精神的リラックスを図る。

■マッサージ用ブレンドオイル
植物油 ・グレープシード油   5ml
精 油 真性ラベンダー油   0.05ml
スウィートマージョラム油  0.05ml
レモン油   0.05ml
  合計5ml(3%)

■マッサージ

夕食前に、背部・肩・後頚部を約20分間、腹臥位の状態でマッサージを行いました。
結 果
  1. 放射線性皮膚障害についての取り組み
    ブレンドオイルの皮膚刺激は全く無く、本人ご家族ともに非常に気に入って頂けたようでした。
    使用し始めて約1週間で頬の赤みが消退しはじめ、皮膚剥離部は、薄い痂皮形成が見られました。
    更に6日後(塗布開始後13日目)になると、黒っぽい「かさぶた様」になっていた左頬の黒い表皮部が、ぎゅっと縮んだようになり、放射線による火傷状態が落ち着きつつある為、ブレンドオイルの内容を変更し、今までのような「傷の治療目的のオイル」から、美容的な目的も兼ねた「肌に良いオイル」を意識したブレンドに変更しました。
    塗布開始後20日経つと黒いかさぶた様の表皮のほぼ2/3剥がれ落ち、新しい皮膚が新生していました。照射部のケロイド様症状も無く、朝のつっぱり感があるとの事でしたが、痛みは全くありませんでした。
    含嗽水、芳香浴は、どちらも使用感を気に入って頂けたようで、特に含嗽は退院まで精油のブレンドを使用しましたが、感染等のトラブルもありませんでした。
  2. 血管刺激性の強い静脈内注射を行う患者様の血管痛緩和及び静脈炎予防
    患者様Aの場合 :湿布開始約2時間後、静脈の赤黒い怒張は消退。本人からも痛みが消失したと言う言葉が聞かれました。
    患者様Bの場合 :プロスタンディン注2回/日×7日間の点滴期間中、血管痛を一度も訴えられる事無く経過され、肉眼的にも、発赤や静脈部の怒張などは全く見られませんでした。

  3. 原因不明の口腔内痛が続いている患者様に行ったアロママッサージの効果
    マッサージの最中は、「気持ちが良か。」と何度も言われ、終わってからも、お金をティッシュに包んで渡そうとされるなど、非常に感激された様子でした。後日「どうでしたか?」と聞きに行くと、「あの夜はひとつも痛みが無くて、痛み止めも眠り薬も使わなくて良かったです。こんな事は初めてでした。肩凝りやストレスが影響する事もあるんですね。ありがとうございました。」と深々と頭を下げられました。
考 察
アロマセラピーケアの、対象になると思われる患者様に、私達がどの時点で関わるのが良いのか?という事を考えた場合、もう少しタイミングを考えれば良かった。と思う事が何度もあります。今回発表した放射線皮膚障害の改善にしても、放射線照射開始前から関わり、できる皮膚保護対策を行っていれば、患者様が味わった苦痛をもう少し軽くできたのではないか?と考えるからです。例えば「寝たきりの患者様」というだけで、私達が関わって行くべきケアは非常に沢山ありますが、これまでもアロマセラピーを通じて、「トラブルを起こした皮膚がきれいになりました。」という経験は幾つもあるのに、「起こす前に予防する。」という取り組みは、どうしても出遅れてしまっているのが実情です。実際起こってしまってからの手当てのケアは、起こす前に比べて多くの費用と時間を費やすことになりますし、何より患者様に苦痛を与えてしまいます。入院時に行う、転倒転落や、褥創発生のリスクマネージメントによる予防策を講じているのと同じように、適切な時期にケアに応用できるシステム作りが今後必要であろうかと思います。
おわりに
今回の取り組みで、ご紹介した4症例のうち、2例の患者様とそのご家族から、病院のご意見箱の中にアロマケアに対する暖かい感謝のお言葉を頂きました。「痛い、苦しい、きつい」だけの病院生活に、待ち望んでいられるような心あるケアを導入したい。という思いで取り組んで来ましたが、患者様のうれしそうな表情や「ありがとう。」「楽しみに待ってるね。」「頑張って」等の言葉に、逆に私達が支えて頂いている。という事を最近特に感じます。 多くの患者様に、より良いケアを提供する事が出来ますよう今後も頑張って行きたいと思います。
参考文献
NARD ケモタイプ精油事典  ナード・ジャパン  ナード・アロマテラピー協会編集
アロマテラピー・精油の中の分子の素顔
―安全に楽しむための基礎化学―  スークラーク著  じほう
アロマレシピ200症状緩和と快適のために  川端一永 監修  メディカ出版
医療従事者のためのアロマセラピーハンドブック 
  川端一永 鮫島浩二 小野村健太郎 偏著  メディカ出版
プロフェッショナルのためのアロマテラピー 
  シャーリープライス・レンプライス著 フレグランスジャーナル社
aromatopia 47 キャリア素材の特性と応用  フレグランスジャーナル社
クリニカルマッサージ  大谷素明 監訳  医道の日本社
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